景気回復がソーシャルなものに与える「悪影響」


このところ景気が回復してきた、というのを肌で実感していた。それは、市場を日々追っているからでもなく、販売活動をしているからでもない。

実はソーシャル分野での働き手たちが俄然忙しくなり、プロボノに対する時間を割ける人が少なくなり、金融業界からマイクロファイナンスに関心を持って転職を考えようとする人が一気に激減しているのを、肌で感じているからだ。

景気が良くなると、打撃を受ける産業。

実は、ソーシャル分野である。

「昼の仕事・夜の仕事」と言って、「夜の仕事」としてソーシャルな仕事に顔を出していた人たちの生活の中で、「昼の仕事」である仕事が「夜の仕事」にかける時間に侵食しつつあり、手を離すことができなくなっている。

様々な人たちが起業や一念発起を考え始めていた矢先、「今いる会社の仕事が面白くなってきて」辞めないでしばらく様子を見ようという人が増えてきた。

(面白い仕事をする、という意味では悪いことではないです!)

打撃を受けているのは、今までプロボノたちに支えられてきた零細NGOや社会的企業。

不景気時代には、優秀な人材は優秀であればあるほど、本業の職務を離れ、より難題、より社会的効果の高い仕事を目指して、一気に流出していたのだが、その波が一気に引き上げつつある。

特にアメリカとイギリスの金融業界の出入りを見ながら、うっすら感じていたのがここ半年。

アメリカでは2009年頭から2009年半ばまでがピークで、社会的企業やNPOへの転職が増えていたように思う。(統計はないのだが)

例えば、学生の就職ランキングでアメリカでNPO業界への就職がランキング1位になったというから驚きだ。

そのゆり戻しが今来ているような感触がある。特に社会的投資分野は金融セクターの転職者が多いこともあり、人材の流動性が激しい様子。金融NPOや社会的投資ファンドの人材獲得は徐々に難しくなるだろう。

そんなことを考えていたら、やはりハーバードビジネスレビューでも同様の記事を最近発見。

http://blogs.hbr.org/cs/2010/08/job_growth_poses_challenges_fo.html

面白いのは、NPOセクターの経営者に対する警鐘とタスクをまとめてあるところで、より競争率の高い人材市場で、NPOセクターも競合他社に勝つためにはどうすればよいかを説いている。

ついついNPOセクターは人使いが荒くなることが多いのだが、そういったことを戒め、スタッフまたは人的リソースのモチベーションとやりたいことに目を向けて、共に歩む姿勢を見せることが要求されている。

また、きちんとしたアセスメントも必要だ、という姿勢、それから金銭的な報酬と非金銭的な報酬の両方を使い分ける、という話も。

日本のNPOセクターにはまだこうしたマネージメントの領域に達している経営者が多くない印象を受けるが、それ以上に、ここまで人材をひきつける市場にまだなっていないことも事実。

最近ようやく日本でもプロボノに注目が集まり始めていたのに、ここで景気が回復して一気にNPOセクターへの就職が「単なる流行化」してしまうのは、なんとも悲しい。

だが、なにはともあれ、景気動向に左右されなければならないことももっと悲しい。中には「流行」としてボランティアをし始めたが、結局長く続かなくてあっさりやめてしまうケースも少なくない。それがNPOの持続可能性に大きな影響を与えているにも関わらず、だ。

より深みのあるキャリア形成の一環として、比較できないほどの価値を提供できるように、本来ならばNPO側も準備していかなければならない。だがそれ以上に、プロボノとして関わる側もそのプレミアムを十分に認識して、責任ある態度で長期的に取り組めるようになりたい。

ソーシャルという意味を考えるとき、最近「忍耐」という言葉がよく頭に浮かぶ。人は自分に対して、どのくらい忍耐強くなれるのだろうか。自分の欲求を深堀することに対して、どのくらい忍耐強くなれるのだろうか。

そんなことを突きつけてくる課題のように思える。

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